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地域業界の幸せ

ピンチをチャンスに変えたヤマサハウスの底力

明るく広々としたリビングは家づくりにおいて憧れのひとつ。しかし従来の木造建築では、大空間大開口をつくることには限界がありました。

そこでヤマサハウスが開発したのが、高耐震の大空間大開口が可能となる「集木(しゅうもく)ワイドフレーム」です。

この技術はウッドデザイン賞2023を受賞し。全国的にも高い評価を受けました。今回は開発に当たった企画開発室 室長の郡山に、開発秘話や可能性について話を聞きました。

日本ウッドデザイン協会では、木を使うことによって、社会課題の解決を目指す活動を「ウッドデザイン」と定義。「ウッドデザイン賞」は、木の良さや価値をデザインの力で再構築することを目的とし、優れた建築・空間や製品、活動や仕組み、研究等を募集・評価し、表彰する制度です。2023年で9回目を迎え、ヤマサハウスはこれまで2015年・2016年にも3作品が受賞。今回で4作品の受賞となり、県内最多受賞を誇ります。

この記事に登場する人

郡山 憲司 こおりやま けんじ 企画開発室 室長

鹿児島大学工学部建築学科卒業後、2002年入社。設計や施工技術マニュアル作成などを経て、企画開発部に。家の性能向上の研究開発を主に担当する。入社以来、ヤマサハウスの住宅をアップデートしつづけてきた家づくり大好き人間。

木造の限界を越える技術開発

―「集木ワイドフレーム」ってどのような技術ですか?

壁と柱は家の強度を保つ大きな要素です。壁と柱が多ければ家の強度は増しますが、暮らしやすいかというと必ずしもそうではありません。

「集木ワイドフレーム」は、強度の高い集成材を用いて梁と柱を繋ぐフレームを作ることで、いわば壁と柱の代わりとなって強度を支え、従来の家づくりと組み合わせることで、木造建築ではできなかった大空間大開口が実現できる技術です。

「集木ワイドフレーム」を採用したリビングダイニング

―この技術開発の始まりは3年ほど前だったとか?

はい。ヤマサハウスは、構造材を現場で使いやすいサイズや形状に加工するプレカット工場を持つ県内唯一のハウスメーカーなのですが、当時、家の骨組みのプレカットと設計図とのチェックを私が担当していました。

日々、家の骨組みを見る中で、「部屋を広く見せるために、柱をなるべく立てずに広い空間を取りたい。だが、これが木造の限界だ」という現実を目にしてきました。

ちょうどSDGsが浸透し始めた時期でもあり、「家づくりはコンクリートより持続可能な木材で」という流れへの変化もあって。木造で大空間をつくることができれば、お客様と社会のニーズに応えられるのではないかと考えたのが開発の発端でした。

―これまでにない技術そのものを作りだすというのは簡単ではなさそうですね。

技術の開発には、柱や梁の1本1本に至る詳細な構造計算が必要ですが、ヤマサハウスではそれが可能でした。そのことが開発を実現できた1番の要素だったと思います。
ところが、開発の途中で新型コロナ感染症のパンデミックの影響を受けることになりました。

海外で一戸建需要が急増し、そのあおりを受けて外国産材が手に入りづらいウッドショックが訪れたんです。

コロナで実現不可能?のピンチに

―コロナの影響は木材の需要にも影響していたのですね、、、

そうですね。あわや実現不可能かという事態でした。ですが、そこで考えたのが、ヤマサハウスが力を入れてきた地域産材の利用でした。

―県内でも伐採期を迎えた地域産材の利用が少ないことは常々課題となっていますよね。

はい、その課題解決への一助にもなるべく、製材を行うグループ会社の山佐木材に協力をお願いし、南九州産の杉材100%で集成材を作ることにしました。強度では外国産材に劣りますが、梁の太さや基礎を変更するなど設計基準の調整を行うことで、「集木ワイドフレーム」は実用可能になりました。

ウッドデザイン賞では、地域のサプライチェーン(※)によって生産される地域産材を使っていることで、CO2排出の削減や地域産業の活性化に寄与する仕組みであるとして、地域産材を用いた点を高く評価していただきました。

※ 調達、製造、在庫、物流、販売、消費までの一連の流れ

授賞式にて

―まさにピンチをチャンスに変えた転機ですね!

それに加えて、この技術は住宅以外の木造建築にも使えるため、大空間による木造の魅力を訴求する提案であることも高く評価されました。この技術を用いることで、開放的なリビング空間をつくることができるだけでなく、窓を大きく取ることができて内と外との一体感を得られるとか、壁を設けずに2台分のインナーガレージがつくれるなど、家づくりの自由度が広がるので、実際のお客様邸への採用も増えています。

地域で完結する持続可能な暮らしを目指して

―確かな技術とグループ企業との連携もヤマサハウスの強みだと改めて感じました。今後はどのような家づくりを目指していますか?

先行きが見えない時代だからこそ、変化に耐えられる柔軟な空間づくりを目指しています。未来の子どもたちのために環境を残せる家づくりをしたいというのが私たちの願いです。

今回のウッドデザイン賞の受賞は、ヤマサハウスの「地域で完結する自給自足で持続可能な暮らし」の取り組みへの評価だと受け止め、これからもさらに広げていけたらと思っています。

―ありがとうございます。林業から始まり、木と共に生きてきたヤマサハウスが目指す循環型の住まいづくり、今後も大切に育んでいきたいですね。

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ヤマサハウスの木材は、自社加工の木材で作られています。

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